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「密航」について

  • 執筆者の写真: 継田恵美
    継田恵美
  • 2020年1月25日
  • 読了時間: 4分

こんにちは。ご挨拶が大変遅くなりましたが、本年も当サイトを宜しくお願い致します。

さて閲覧頂いた方より、からゆきさん達が海外に渡って行く際の「密航」についてご質問を頂きましたので、ブログに書いてみようと思います。


からゆきさんを語る時、船底や船倉に押し込められるようにして長い航海の間、ろくすっぽ食糧や水も与えられず、糞尿も垂れ流し不衛生な状況で、はたまた娘さん達を狙って船乗りたちが無理無体を強いたというような話が、散見致します。

実際どうであったのか・・・それこそ実態が「密航」であれば隠し事になりますし、ご存知のように「からゆきさん」達は文字で書き記すことが可能だった人も居なかった状況から、

当事者サイドが書き残したものは皆無に近いと思います。今村昌平監督のドキュメンタリー映画「からゆきさん」では、主人公の善道キクヨさんは『密航した』と語って居ますが、同じ映画に出て来るからゆきさんは『お客さんの乗る良か船で来た』と語って居ます。実際、長崎から査証を正式に受け取り仏印へ渡ったという記録が残っている方もいます。

海を渡った「からゆきさん・からゆきどん」の人数は、この「密航」などもあったことから

正確な人数は分かりません。良く言われるように数万という人数であった時、その人数が正式な手順を踏まず「密航」していけるとはなかなか考えづらいです。私も永らく疑問に思っていましたが、よく研究をしておられた年長の方から「考えて御覧なさい。仮に彼女、(また彼ら)が『労働力』であるならば、またもし娼館などで働かせるための要員であったなら

餓死寸前になるほど過酷な状況にはしないでしょう。密航させるにしても、不正に連れ出すには船員の協力が不可欠で彼らに袖の下を渡す必要があったはず。こういった費用も掛けて

密航で犠牲者が出ても構わないという状況になかったと考える方が自然では。」と言われました。確かに「マドロス夜話」等の資料本には、マストの帆に女性を巻いたり、樽に入れて

転がしたり海に落とし小舟で上陸したとか、また水槽に彼女らを隠していたのにタンクに水を入れてしまい溺死させたなどという話がありますが、全部の渡航ケースがその様であったとは思いません。つまりあまりにもリスクが大きく「非効率」ということでしょう。「密航」が横行したことは事実でしょうが、警察の取り締まりも厳しくなり、船内の調査もされることから、だんだん知恵もついて来て、他人のパスポートを使ったり「妻」や「姪」と関係を偽りつつ乗船をし出国したという話も出てきます。それに、海を渡り出稼ぎをしたのは女性だけではありません。男性については、どの様に渡航したか細かく書かれた資料がないので、引き続き注意して探してみたいと思います。


南島原の口之津から密航していく様を伝えるものには、

~船で外国に送り出す日には必ず山火事が置き、警察の目を火事に向けさせ、その隙に娘さんたちを船に乗せていた。警察は密航者を発見する手段として、船倉で「硫黄」を焚き船底に隠れている密航者をいぶり出した。~と言う記載を見つけました。


しかしこれが本当に行われたかどうかは今となってはわかりません。それでは伝聞の域を出ないのかと言うと、この「火事騒ぎ」に乗じて船に乗せる話は小説ではありますが宮﨑康平著「からゆきさん物語」60ページ以降にも書かれ、こうして小説のモチーフにもなることから、全く無かったわけではないと思います。

(個人的に、これら複数の資料を読み解く「冷静な目」が必要だと思っています。)


上でも書きました様に、現代に生きる私達にとっては「密航」は不可能な手段にも思えます。(つい最近、カルロス・ゴーン氏が楽器ケースに潜み密出国しましたけれど!)

冗談はさておき、その様子があまりにも悲惨で残酷で、そういう事ばかりに目が向きがちになってしまいますが、海外に出稼ぎに行く全部のケースがその様に陰惨なものであったわけではないことを記しておきたいと思います。正規のルートで海を渡った証言もあります。


さて私事ですが、2月、3月と取材に参ります。今その準備をしていますが、海を渡り出稼ぎをした人々、それは男性も女性もですけれど、それぞれ経済的に自立をして、現地で商売をしていた方、最初はタダ同然の土地を開墾しゴム園で成功しその後は手広く事業を展開した方、上海で女中さん(お手伝いさん)をしていた方について調査取材ができそうです。

また当サイトでご紹介できるかもしれません。遠い遠い過去の様で、実は手を伸ばせばすぐ引き寄せることができる時代について引き続き勉強して参ります。それではまた。


#からゆきさん








 
 
 

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